長期プライムレートとは?短期プライムレートや不動産投資ローン金利も解説

不動産投資を検討する場合、ローンを利用する場合がほとんどですが、そこで目にするものに「長期プライムレート」があります。長期プライムレートは、民間金融機関が、長期(1年以上)企業に融資をする時の最優遇金利です。

本記事では不動産投資ローンで利用される長期プライムレートについて説明します。長期プライムレートの決定方法について紹介し、不動産投資ローンで採用されている短期プライムレートや固定金利についても説明します。不動産投資に関心のある人の参考にしてください。

目次

長期プライムレートと短期プライムレートとの違い

不動産購入に際し、ローンを組むのが一般的とされています。金融機関はローンの基準金利として、長期プライムレート、および短期プライムレートを採用しています。長期プライムレートや短期プライムレートは、どのように決められているのでしょうか。

長期プライムレートは長期金融市場の長期債券取引がベース

長期プライムレートとは、金融機関が企業に1年以上融資する際の最優遇金利のことをいいます。金融自由化前は、長期信用銀行が発行する5年物の利付金融債(ワリチョウ、ワリシン、ワリコー等)を基準に一定の割合(0.5%が主流)を上乗せして金利が決められていました。金融機関は長期プライムレートを基準金利として、融資先の信用状況や融資期間等勘案して、基準金利に上乗せして、各融資先に貸出を行っていました。

現在、長期プライムレートは、各金融機関が独自に決めているのが一般的です。長期金融市場における国債、社債などの取引等を参考にして金利を決定しています。

長期プライムレートの特徴として金利の変動が激しい点があります。主力行の一つ、みずほ銀行の2023年5月現在の長期プライムレートは、1.40%です。

なお、直近5ヶ月の主力行の長期プライムレートおよび短期プライムレートは以下のように推移しています。短期プライムレートが一定なのに対し、長期プライムレートは変動しているのがわかります。

通常、貸倒リスク等を鑑み、長期金利の方が短期金利より高くなるのが一般的です。近年の景気動向等により、長期プライムレートは、短期プライムレートより下回るケースが頻繁に出現しています。

【長期・短期プライムレート推移表】

2023年1月2023年2月2023年3月2023年4月2023年5月
長期プライムレート1.40%1.50%1.45%1.40%1.40%
短期プライムレート1.475%

(引用:日本銀行 「長・短期プライムレート(主要行)の推移 2001年以降」より作成)

短期プライムレートは日本の景気動向等により変動

短期プライムレートは、金融機関が企業に融資する際の、期間が1年未満の最優遇金利のことです。短期プライムレートは主に日本銀行の政策金利を基に、それぞれの金融機関が決めています。日本銀行の政策金利は経済情勢や景気動向等により、景気が好転すれば金利が上昇し、減速すれば金利が下がる仕組みです。

短期プライムレートの特徴として、金利の上がり下がりが穏やかな点があります。2009年1月以降、2023年5月現在に至るまで、最頻値が1.475%と横ばいで推移しているのがその証左です。

住宅ローンの変動金利型の基準金利のベースとして使われている点も短期プライムレートの特徴の一つです。金融機関の大半は、短期プライムレートに1%を上乗せしたレート金利を住宅ローン変動金利型の基準金利としています。

不動産投資ローンとは?

不動産投資ローンとは、事業として不動産を購入するために利用するローンです。住宅ローンとの違いや不動産投資ローンが採用している金利について解説します。

不動産投資ローンと住宅ローンの違い

不動産投資ローンと住宅ローンの違いはさまざまありますが、一番の相違点は貸付の目的です。住宅ローンとの違いを整理します。

不動産投資ローン

不動産投資ローンは、不動産事業を営む上において購入する不動産に対するローンです。一般的に、金融機関は借入する人の信用状況や事業計画について厳しい審査を行う傾向にあります。

購入した不動産物件の収益性や資産価値、予想収益や返済財源として問題ないのか、あるいは事業計画に懸念はないか等です。不動産投資ローンを取り扱っている金融機関は、メガバンクより、ネット銀行や不動産投資ローンを中心に取り扱っているノンバンクが積極的に取り組んでいます。

住宅ローン

住宅ローンは、申込者自身が住居としての不動産を購入するためのローンです。申込人本人に返済能力があるかどうかについて審査します。

資金使途がマイホーム購入資金の融資であるため、延滞する可能性は低いとされています。そのため、住宅ローンは、どの金融機関にとっても主力商品としての位置づけです。

2種類の金利―変動金利型と固定金利型―

不動産投資ローンには、変動金利型と固定金利型の2種類あります。それぞれの特徴を紹介します。

変動金利型

変動金利型は年に2度金利の見直しがあるのが一般的です。通常、変動金利は、短期プライムレートから一定の金利を上乗せした金利をベースとして採用している金融機関が多いです。

金利の変動にかかわらず、5年に1度の返済金額の見直しがあります。借り手保護の観点から返済金額は、前回の返済金額の125%を上限としている点が特徴です。

メリットは、毎月の返済金額を抑えられる点があります。デメリットとして、金利が上昇する局面では、毎月返済金額に対する利息の割合が増える点です。利息が増えれば毎月返済する元本の減るスピードが遅くなり、最終返済日に一括して支払わねばならないことも考えられます。

固定金利型

固定金利型には、全期間固定金利と、5年固定・10年固定といった固定期間が決まっている固定金利とがあります。

メリットは、全期間または一定期間金利が固定されているため、資金計画が立てやすい点です。一方で、固定金利は変動金利の1.5倍ほどで設定されているものが多く、市場金利が下がった場合でも、固定金利は高止まりといったデメリットがあります。

2種類の変動金利型ー長期プライムレート連動型と短期プライムレート連動型―

不動産投資ローンには変動金利型がありますが、その中にも、長期プライムレート連動型と短期プライムレート連動型の2通りがあります。

長期プライムレート連動型

先述の通り2023年5月現在、長期プライムレートは1.40%、短期プライムレートは1.475%で推移しています。長期・短期の金利差が逆転した状況であるため、長期プライムレート連動型の方が現時点において返済金額が少なくて済む傾向にあります。

長期プライムレートは短期プライムレートと比較して金利の動きが活発なため、金利差が逆転する恐れもある点に注意しましょう。

短期プライムレート連動型

金利の変動は長期プライムレートと異なり穏やかな動きであるのが、短期プライムレート連動型の特徴です。長期プライムレートの利率の動きに遅れて呼応して動く傾向があります。

短期プライムレートの金利の変動はある程度予測可能といった点も特徴の一つもいえるでしょう。

長期プライムレートまとめ

不動産投資ローンの金利には、固定金利型、変動金利型の2種類あります。

変動金利型にも、長期プライムレート連動型と、短期プライムレート変動型の2通りがあります。それぞれ特徴があるので、どれを選択すべきかは一概に言えません。

不動産投資ローンは金額が大きいので、少しの金利の変化で返済金額が大きく変わります。

投資家自身が金利の特徴を把握し、思い描いているプランと合致するローンを選択することが、有効な借入になるでしょう。


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