住宅ローンの変動金利はどう決まる?仕組みや気をつけるべき点を解説

住宅ローンには2種類の金利があります。変動金利と固定金利です。どちらを利用すれば得なのか考える人もいることでしょう。住宅金融支援機構の住宅ローン利用者調査(2022年10月調査)によると、変動金利型を選択した人は全体の69.9%です。20.1%が固定期間選択型、残り10.0%が全期間固定型を選択している結果となっています。

本記事では住宅ローンの変動金利について解説します。変動金利の仕組みや特徴、注意点について紹介しているので、これから住宅ローンの利用を検討している人の参考になれば幸いです。

目次

住宅ローン変動金利とは?

住宅ローンは変動金利・固定金利の2種類の金利から選択する仕組みです。2種類の概略および変動金利の仕組みについて紹介します。

住宅ローンには2種類の金利がある

住宅ローンには変動金利型および固定金利型の2種類の金利があり、利用者はどちらか一方を選択します。

変動金利型

変動金利型の住宅ローンは、半年ごとに金利の見直しがあります。景気動向や経済情勢に応じて各金融機関が設定する基準金利が変動するのが特徴です。通常、固定金利型より金利が低く設定されています。

固定金利型

固定金利型の住宅ローンは、5年、10年等固定期間選択型、および全期間固定型の2種類があります。文字通り金利の変動がないのが特徴で、変動金利型に比べて、金利が高めに設定されているのが一般的です。

変動金利の仕組み

変動金利は、各金融機関の短期プライムレートに1%を上乗せした金利を採用しているのが大半です。各金融機関が変動金利のベースとしている短期プライムレートとはどのようなものなのでしょうか。

短期プライムレートとは、各金融機関が企業に融資を行う際の最優遇貸出金利(1年未満)のことです。短期プライムレートは、日本銀行が公表する政策金利を基に各金融機関が決定するのが一般的です。日本銀行は、経済状況や景気動向に応じて政策金利を決定します。景気がよくなると金利が上がり、減速すると下がる仕組みになっています。つまり各金融機関の短期プライムレートの上がり下がりは、日本経済の景気動向に影響しているといっていいでしょう。

日本銀行のHPでは、主要行の短期プライムレートの推移表を公開しています。最頻値は2009年1月の1.475%以降、2023年5月現在に至るまで変わらず推移しているのが読み取れます。

参考:日本銀行「長・短期プライムレート(主要行)の推移 2001年以降」

変動金利型の住宅ローンの特徴とは?

変動金利型の住宅ローンには3つの特徴があります。

  • 6ヶ月ごとに金利の見直しがある
  • 5年ごとに返済額見直しがある
  • 返済金額が25%を上限に増える可能性がある

変動金利型の利用を検討する場合、多くの金融機関が採用してる特徴なので、押さえておきたい項目です。なお、すべての金融機関が導入しているわけではないので、事前に確認することをおすすめします。

6ヶ月ごとに金利の見直しがある

住宅ローン金利を年に2度見直す金融機関が大半です。4月1日現在および10月1日現在の2度です。4月1日現在の住宅ローン基準金利を7月返済分より、10月1日現在の基準金利を翌年1月返済分より適用します。金利に変更がある場合、基準日から3ヶ月後の返済分から適用されることとなります。

5年ごとに返済額見直しがある

住宅ローン変動金利型は、5年に1度、返済額の見直しを行います。5年ルールと呼ばれます。特徴として、毎月の返済金額に変更がない点です。通常、住宅ローンは元利均等払いであるため、毎月の返済金額が5年間一定です。5年間に金利の見直しがあった場合、元本と利息の割合が変化します。金利が上昇した場合、毎月の返済額は変わらないものの、返済金額に占める元本の割合が減り、利息が増えることとなります。

返済金額が1.25倍を上限に増える可能性がある

変動金利型の住宅ローンでは、返済金額が増加する場合があります。一般的に、返済金額が元の返済金額の1.25倍を超えないようにしており、通常125%ルールと呼ばれています。

【重要】変動金利の注意点

変動金利の注意点は、金利が上昇した場合です。金利が上がった際に注意する点として次の4点があります。

  • 金利上昇に比例し返済金額が増える恐れがある
  • 元金が減るスピードが遅くなる
  • 最終返済日に残額を一括返済する恐れがある
  • 未払利息の発生するリスクがある

金利上昇に比例し返済金額が増える恐れがある

変動金利であるため、金利が上昇すれば、比例して返済金額が増加する恐れがあります。

住宅ローンを利用した当初より、経済状況や景気動向が上向きとなれば、短期プライムレートは上昇するのが一般的です。

短期プライムレートの上昇は住宅ローンの変動金利の上昇を意味します。返済金額が増加すれば、家計を圧迫し、返済面に支障が出る恐れがあるかもしれません。住宅ローンで変動金利を選択する場合、金利上昇を見込んだ返済計画をシミュレートすることをおすすめします。

元金が減るスピードが遅くなる

変動金利選択にあたって、注意すべき点の一つが、元金が減るスピードが遅くなる点です。

通常、金融機関は5年に1度、返済金額の見直しを行います。5年間返済金額の変更がないため、金利が上昇すれば、毎月の返済金額の利息に占める割合が増加し、返済元本が減少します。場合によっては、返済金額の大半が利息というケースも起こり得るかもしれません。

金利が上昇することで、元本の返済額が少なくなります。当初予定していた元本の減少するスピードより遅くなる点も考えておかなければなりません。

最終返済日に残額を一括返済する恐れがある

最終返済日に、住宅ローンの元本を一括して返済しなければならないリスクがあることを理解しておくことが必要です。金利が上昇した場合、元利均等払いのため、毎月の返済金額における元本の割合が減少します。当初、住宅ローンを利用した時の予定元本返済金額が下回り、返済元本の減少により、返済されていない元本が後回しとなります。

後回しとなった元本が残っていき、最終返済日にまとめて返済しなければなりません。

対策として、毎月返済金額以外に、元本の一部入金を行うことで、最終返済日に一括して返済する元本が軽減できます。

未払利息の発生するリスクがある

金利上昇幅が大きい場合、毎月返済金額以上の利息が発生することも考えられます。つまり、未払利息が発生するリスクが起こり得る点も注意点の一つです。

未払利息が発生した場合、5年間返済額が変わらないため元本同様に増加します。最終返済日までに未払利息が膨れ上がることが考えられます。

金利が上昇すると、支払利息の増加、元本の返済スピードが遅くなる点を十分理解し、対策を講じておく必要があるといえるでしょう。

変動金利まとめ

住宅ローンには2種類の金利があります。変動金利、および固定金利です。変動金利は基準となる金利が存在し、各金融機関が定めている短期プライムレートをベースに住宅ローン基準金利を決定しているのが大半です。

住宅ローンは年に2度、4月と10月に金利の見直しがあります。また、5年に1度返済金額の見直しや最大返済金額が1.25倍を上限に見直す点もあります。金利が上がった場合、返済金額は変わらないものの、元本と利息の割合が変わる点に注意しましょう。場合によっては未払利息が発生し、最終返済日にまとまった金額を返済するケースもあるかもしれません。

金利選択を検討する場合、変動金利の仕組みや特徴、注意点を把握することを推奨します。

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