預入している金融機関が破綻した場合、預金は払戻しできるのでしょうか。預金には一定の金額まで保護される制度が存在しています。預金保険制度です。預金保険機構という、政府等が出資している法人により預金保険制度は運営されています。
本記事では、預金保険制度について解説します。保護される預金の種類および上限金額、対象金融機関を紹介するので、預金保険制度について少しでも疑問があればぜひ参考にしてください。
預金保険制度について
取引している金融機関が万が一破綻した場合、預金は一定の金額まで守られている仕組みとなっています。預金者を保護する仕組みを預金保険制度といいます。ここでは預金保険制度の概要について解説しましょう。
預金保険制度は預金者の預金を守る制度
預金保険制度とは、金融機関が万が一経営破綻した場合、一定額の預金を保護する制度です。預金保険制度は預金保険機構という法人により管轄・運営されています。預金保険機構は預金保険法に基づき、1971年7月に設立されました。
預金保険機構の使命として、以下のものがあります。
- 預金者等の保護及び破綻金融機関に係る資金決済を確保する
- 預金保険制度を確立し、信用秩序の維持に資する
- 預金保険法の目的達成に向けて、預金保険制度を適切に運用する
預金保険機構は預金者の保護はもちろん、破綻金融機関の資金決済を確保する役割も担っています。
預金保険機構の出資金は314億5,500万円で、出資の内訳は、政府が311億7,000万円、日本銀行が1億5,000万円、民間金融機関が1億5,500万円です。
(引用元:預金保険機構)
預金保険制度の対象となる金融機関
預金保険法により、対象となる金融機関は定められています。対象となる金融機関は次の通りです。
- 銀行(都市銀行・信託銀行・地方銀行・第二地方銀行・その他の銀行(主にネット銀行等))(計134)
- 信用金庫(計254)
- 信用協同組合(計145)
- 労働金庫(計13)
- 連合会(信金中央金庫・全国信用協同組合連合会・労働金庫連合会)(計3)
- 株式会社商工組合中央金庫
具体的な金融機関名は、預金保険機構のHPに掲載されているので、確認することを推奨します。
(引用元:預金保険機構)
預金保険制度はどんな預金でも保護してくれるの?
預金であればすべて保護されるということではありません。保護される預金、保護されない預金があります。また預金によっては全額保護、または一定金額まで保護される預金もあるので注意しましょう。
預金保険制度で保護されている預金の範囲
倒産等、金融機関に万が一のことが起きた場合、預金保険で保護されている預金の金額は以下の通りです。
【保護の範囲】
預金などの分類 | 保護範囲 | ||
預金保険対象預金 | 決済用預金 | 当座預金利息のつかない普通預金 | 全額保護 |
一般預金 | 利息のつく普通預金定期預金定期積金元本補てん契約のある金銭信託(ビッグなどの貸付信託を含む)金融債(保護預り専用商品に限る)など | 1金融機関ごとに合算して、預金者1人当たり元本1,000万円までと破綻日までの利息等を保護 | |
預金保険対象外預金等 | 外貨預金譲渡性預金金融債(募集債及び保護預り契約が終了したもの)など | 預金保険対象外 |
(引用:預金保険機構「預金保険機構の概要」より筆者作成)
【補足説明】
- 「利息のつかない普通預金」とは以下の要件を満たす預金のことです。町内会やサークル、マンション管理組合等でも、利息のつかない普通預金を利用されています。
- 決済サービスを提供できる
- 預金者が払戻しをいつでも請求できる
- 利息がつかない
- 金融機関が合併を行ったり、事業譲渡を受けたりした場合、特例があります。
合併や事業譲渡後1年間に限り、全額保護される預金を除いて「預金者1人当たり1,000万円×合併等に関わった金融機関の数」が保護される金額です。例えば、3行合併の場合は、3,000万円です。
- 定期積金の給付補てん金、金銭信託における収益の分配等も利息と同様の扱いとなり、保護されます。
預金保険制度で保護されない預金等の取り扱いについて
預金保険対象預金のうち次の預金は、破綻金融機関の財産の状況に応じ、一部カットされる場合があるので注意しましょう。
- 一般預金で1,000万円を超える部分
- 預金保険対象外預金
(引用元:預金保険機構)
預金保険制度に関連する疑問点
預金保険制度でいくつかの疑問点について回答します。
Q1 預金保険制度で保護されない預金とは
預金保険制度では、保護されていない預金も存在します。主な預金は以下の通りです。
- 外貨預金(米ドルやユーロ等、海外の通貨での預金)
- 譲渡性預金(第三者に指名債権譲渡方式で譲渡可能な無記名の定期預金)
- オフショア預金(特別国際金融取引勘定において経理された預金)
- 日本銀行からの預金等(国庫金を除く)
- 対象金融機関からの預金等(確定拠出年金の積立金の運用に係る預金等を除く)
- 募集債である金融債及び保護預り契約が終了した金融債
- 受益権が社債、株式等振替法の対象である貸付信託又は受益証券発行信託
- 仮名・借名預金(他人名義の預金等)
- 導入預金(特定の第三者に融資等をすることを条件に行っている預金で、禁止行為の一つです。)
Q2 同一金融機関に複数の講座がある場合はどのように処理するのですか?
同一の預金者が同一金融機関内に複数の支店に預金口座を保有している場合もあります。
口座を保有している金融機関が万一破綻した場合、複数の口座を集約し、これを「名寄せ」といいます。
破綻金融機関は、預金保険機構へ預金者データを提出しなければなりません。
その際、同一預金者の名寄せを行い、複数の預金口座の残高を合わせて預金等の総額を算出して、預金保険で保護が可能な預金額を確定します。
もし、迅速に破綻金融機関から正確な預金者データが迅速に提出されないと、預金保険で保護される預金額が確定できません。円滑な預金等の保護が行えず、支障をきたすことになります。
金融機関は、日頃より、名寄せに必要な預金者データ等を整備するように預金保険法で義務づけられています。
Q3 預金保険制度は預金者の加入が必要ですか?
「保険」という文言があるので、預金者は保険料を支払う必要があるのかと思う利用者もいるかもしれませんが、預金者は金融機関に保険料を支払うことは不要です。
対象金融機関は、前事業年度の保護の対象となる預金(決済用預金、一般預金等)の残高に預金保険料率を掛けて、預金保険料を計算して預金保険機構に納めます。
2023年度の預金保険料率は、決済用預金は0.021%、一般預金等は0.014%です。
Q4 自分の預金は預金保険制度に保護されているかどうかを確認したい
自分の預金は預金保険制度で保護されているのか心配になるかもしれません。その場合、預金保険機構HP「よくわかる あなたの預金保護チェック」で確認できます。質問がいくつかあり、答えていくだけで、利用している預金が、預金保険制度に保護されているのかどうかがわかる仕組みとなっています。
Q5 預金保険機構の業務は?
預金保険機構の業務として、以下のものがあります。
- 預金保険業務
- 破綻処理業務
- 資本増強業務
- 不良債権買取、責任追及業務
- 資本参加業務
- 金融支援業務
- 口座登録法・口座管理法に基づく業務
- 財務業務
- 国際業務
- 調査研究業務
(引用元:預金保険機構)
預金保険制度まとめ
預金保険制度は、万が一、金融機関が破綻した場合に預金者を保護する保険です。預金保険料は金融機関が預金保険機構に納付するため、利用者が支払う必要はありません。
預金には全額保護される預金や保護される金額があらかじめ定まっている預金、または保証対象外の預金等さまざまあります。預金者は十分確認する必要があるでしょう。