ファクタリングの仕訳と会計処理~簡単にわかりやすく解説~

ファクタリングを利用したことがある、これから検討したことがある企業や個人事業主の方は、どのように経理の処理をすれば良いか悩んでしまうかもしれません。ファクタリングには買取型と保証型があり、それぞれ仕訳の方法が異なります。今回は、それぞれのファクタリングの会計処理について、取引の流れにそって簡単に解説します。

目次

買取型ファクタリングの会計処理(契約と入金が別の日)

買取型のファクタリングとは、支払期日に達していない売掛金をファクタリング会社に売却して、早期に資金調達する方法です。入金される金額からは手数料が差し引かれます。つまり、①掛けで売上が発生(売掛金が発生)→②売掛金をファクタリング会社に譲渡(売却)→③ファクタリング会社から入金(手数料が引かれる)という3ステップです。売掛金という資産が、現金という資産に変わるだけの話で、債務が発生するわけではないため負債は一切でてきません。

①掛けで売上が発生したときの仕訳

※それは知ってるよ、という方は読み飛ばしてください。話を分かりやすくするための消費税の仕訳は除きます。

例)100万円の売上を掛けで計上した

借方 貸方
勘定科目 金額 勘定科目 金額
売掛金 1,000,000円 売上 1,000,000円

②ファクタリング会社に売掛金を売却した(契約した)ときの仕訳

例)100万円の売掛金をファクタリング会社に譲渡する契約をした(この時点では入金されていない)

借方 貸方
勘定科目 金額 勘定科目 金額
未収金 1,000,000円 売掛金 1,000,000円

③ファクタリング会社から入金があったときの仕訳

例)100万円の売掛金をファクタリング会社に売却し、手数料5%分(5万円)を差し引かれた金額が入金された

借方 貸方
勘定科目 金額 勘定科目 金額
普通預金 950,000円 未収金 1,000,000円
雑損失 50,000円

未収金が決算書に出ても問題ない?

ファクタリング契約と入金日が同じ決算期間内にあれば、未収金は帳簿には残るものの決算書には出てきません。一方、契約と入金日が別のタイミングで、②と③の間に決算があった場合には決算書の貸借対照表に未収金が記載されます。が、心配はいりません。もし取引銀行から未収金の内容を質問されたら「ファクタリング契約をして入金を待っている分です」とても金融機関へ説明しておきましょう。

ローン(借入)の仕訳

買取型ファクタリングの会計処理では、負債が全く登場しませんでした。ファクタリングを融資と誤解している方も多いため、ローン(借入)の仕訳も参考までに解説します。銀行から100万円を返済期間6ヶ月(つまり短期の借入金)、年利4%で借り入れたとすると、仕訳は以下のようになります。

例)銀行から100万円を借りたときの仕訳
借方 貸方
勘定科目 金額 勘定科目 金額
普通預金 100万円 短期借入金 100万円
例)6ヶ月後に元本と金利を返済したときの仕訳
借方 貸方
勘定科目 金額 勘定科目 金額
短期借入金 100万円 普通預金 102万円
支払利息 2万円

買取型ファクタリングで契約と入金が同日だった場合の会計処理

買取型ファクタリングには、2社間(または2者間ともいう)ファクタリングと3社間(または3者間ともいう)ファクタリングがあります。2社間ファクタリングは売掛先が契約の当事者になり、3社間ファクタリングは当事者になりません。別の言い方をすると、2社間は売掛先にバレずにファクタリングを利用でき、3社間は知られてしまうということです。そういった違いがあるため、2社間ファクタリングの方が入金スピードが早くなる傾向にあり、中には即日入金の場合があります。そのケースの仕訳では、以下のようになります。

①掛けで売上が発生したときの仕訳

例)100万円を掛けで売上を計上した

借方 貸方
勘定科目 金額 勘定科目 金額
売掛金 1,000,000円 売上 1,000,000円

②ファクタリング会社に売掛金を売却し(契約し)、当日に入金があったときの仕訳

例)100万円の売掛金をファクタリング会社に譲渡する契約をし、手数料5%分(5万円)を差し引かれた金額が当日に入金された

借方 貸方
勘定科目 金額 勘定科目 金額
普通預金 950,000円 売掛金 1,000,000円
雑損失 50,000円

手数料で何の勘定科目を使うべきか

上記の仕訳例では、勘定科目の「雑損失」を使いました。ただし、これは絶対に雑損失でというわけではなく「売上債権譲渡損」など、営業外費用に該当する勘定科目なら問題はありません。会計ソフトを使っている場合、勘定科目名がメーカーごとに異なります。心配な場合は、顧問税理士か税務署に確認してください。

手数料に消費税は発生するのか

※ファクタリングの取引については、消費税は非課税です。つまり、ファクタリングの手数料には消費税が課税されないということです。万が一、ファクタリング会社から請求された手数料に消費税が含まれていたら、その会社が何か誤解をしているか、おそらくは悪質なファクタリング会社です。注意しましょう。参考)ファクタリングの手数料は”金利”ではない~手数料が安いオススメの会社も紹介~

債権譲渡登記が必要だった場合

債権譲渡登記が必要な買取型ファクタリング契約の場合、司法書士へ支払う報酬と、法務局へ支払う登録免許税(収入印紙の購入費用)が発生します。報酬の仕訳で使う勘定科目は「支払手数料」「支払顧問料」「業務委託費」「顧問料」などの費用の科目です(どれでも問題ありません)。登録免許税の仕訳は「租税公課」という費用の科目を使います。

※債権譲渡登記の費用を負担するのはファクタリング会社のため、ファクタリング利用者にとっては不要な仕訳です。

債権譲渡登記だけの仕訳


例)債権譲渡登記するために司法書士へ依頼し、報酬3万円と収入印紙7,500円を支払った。

借方 貸方
勘定科目 金額 勘定科目 金額
支払手数料 30,000円 普通預金 37,500円
租税公課 7,500円

売掛金の売却と入金も含めた仕訳

例)債権譲渡登記が必要なファクタリング会社と、100万円の売掛金をファクタリング会社に譲渡する契約をし、手数料5%分(5万円)、司法書士への報酬3万円、登録免許税を差し引かれた金額が当日に入金された

借方 貸方
勘定科目 金額 勘定科目 金額
普通預金 912,500円 売掛金 1,000,000円
雑損失 50,000円
支払手数料 30,000円
租税公課 7,500円

保証型ファクタリングの会計処理

保証型ファクタリングとは、売上債権の未回収リスクを避けるために、債権回収を保証会社に保証してもらう仕組みです。保険に似た仕組みで、保証会社に会費を支払います。もし売上債権が回収できなくなった場合に、保証会社から保証金を支払ってもらえます。

例)売掛金100万円が回収不可能になり、保証ファクタリング会社から保証金(保険金)を受け取った

借方 貸方
勘定科目 金額 勘定科目 金額
貸倒損失 100万円 売掛金 100万円
普通預金 100万円 雑収入 100万円

ファクタリングの会計処理まとめ

買取型ファクタリング、保証型ファクタリングそれぞれの会計処理について解説しました。お気づきかと思いますが、ファクタリングの会計処理では「借入金」などの「負債」が出てきません。買取型ファクタリングの取引であれば、貸借対照表の「資産」である「売掛金」を売買することで、同じく「資産」である「現預金」が増える(手数料が損益計算書の「費用」の「雑損失」として差し引かれる)という会計処理です。保証型ファクタリングであれば、同じく売掛金が回収不能になって「貸倒損失」という費用が発生し、保証会社から「収益」である「雑収入」が入ってきて、現預金が増えます。どこにも負債は登場しません。買取型ファクタリングと似たような取引に「手形の割引」があります。そちらも解説していますので、ぜひ読んでみてください。参考)ファクタリングと手形割引~両者の違いと似ている部分について~

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