手元流動性、または手元流動性比率という言葉を聞いたことはありますか?両方とも、財務の短期的な健全性を測るための経営指標です。そういった指標で一般的なのは「流動比率」や「当座比率」ですが、さらに厳しく短期安全性を分析したい場合には、この手元流動性比率を用います。
手元流動性とは
手元流動性とは、貸借対照表の流動資産の中で、すぐに現金化できる資産のことを言います。具体的には、現金、預金、短期有価証券(1年以内に換金できる有価証券)が含まれます。売掛金や受取手形など、比較的に換金性の高い流動資産であっても、手元流動性からは除外されています。
手元流動性比率とは
手元流動性比率とは、1ヶ月分の売上代金を回収するまでの間、手元にある現預金と短期有価証券で支払いが可能かどうかを表しています。そのため、手元流動性比率は、財務分析の際に短期的な支払能力を分析するときに使われます。なお、手元流動性を手元流動性比率と同じ意味合いで用いる場合もあります。
手元流動性比率の計算式
手元流動性比率の計算式は、以下のとおりです。
手元流動性比率=手元流動性÷月商
月商というのは、年間売上を12ヶ月で割った平均値のことです。
手元流動性比率の目安
手元流動性比率の目安は、業種業態や企業規模によっても変わりますが、中小企業であれば1.5(ヶ月)もあれば十分だと言われています。それを下回ると、安全性に懸念が出てきます。
手元流動性比率は高ければ高いほど良いのか
安全性を測る指標である手元流動性比率ですが、高ければ高いほど良いとは言い切れません。仮に、手元流動性比率が12(ヶ月)、つまりは年商と同じだけの手元流動性の会社があるとしましょう。安全性の面だけで考えれば、この会社は優秀かもしれません。しかし、営利企業たるもの、資産を有効活用して収益を生み出すのが本来の姿です。過剰な手元流動性がある場合には、未来に収益を生み出すように投資して、資産を回転させていくことも求められます。
短期的な安全性を測る他の経営指標
企業の短期的な支払能力を分析できる経営指標は、手元流動性の他にも2つあります。前述のとおり、流動比率と当座比率です。参考までに、計算式だけ簡単に紹介します。両者を比べると、当座比率の方が厳密に健全性を分析できますが、手元流動性はさらに厳しく安全性を分析が可能なことが分かると思います。
流動比率の計算式
流動資産÷流動負債✕100
当座比率の計算式
当座資産÷流動負債✕100
※当座資産:流動資産-棚卸資産
手元流動性比率を高めるファクタリング
流動比率や当座比率と異なり、手元流動性には売掛金が含まれません。なぜなら、売掛金は自分の意志で現金化できるわけではなく、取引先からの入金を待たなければならないからです。経営指標のうえではそれが事実ですが、売掛金の回収期限前に早期に現金化する手法もあります。それが「ファクタリング」です。ファクタリングとは、売掛金をファクタリング会社に買い取ってもらい、手数料などの諸経費を差し引かれた代金が入金されるサービスです。もちろん、売掛金を無理に現金化する必要はありませんが、資金繰りに窮していて銀行などからの借入に頼れない場合には、おすすめします。