資本金とは何か~増資したときの仕訳、税金との関係について~

資本金とは、株主から会社に対して出資した金額の合計額のことです。新会社法が施行されて、1円の資本金で会社設立ができるようになりました。今回は、資本金の意味と、増資や減資をしたときの仕訳なや税金との関係などについて簡単に解説します。

目次

資本金とは

資本金とは、その会社に対して、株主がこれまでに出資した金額の累計額のことです。まずは、会社を設立するときに払い込んだ資本金。その後、増資や減資をしていれば、その金額も資本金に反映されています。資本金という勘定科目もあり、貸借対照表の純資産(自己資本)の部に含まれます。

会社設立時の適切な資本金の額とは

株式会社を設立する時に、どれだけの資本金があれば最適なのでしょうか。その答えに、絶対的な回答はありません。ネットビジネスのように、自己資金が少なくても初められる事業を展開するのであれば、資本金は1円でも問題ないかもしれません。ただし、会社では固定費の支払が発生します。売上を計上しても入金までに時間がかかるものです。キャッシュフローが安定するまでの間、支払いに足りるだけの資本金を自己資金として準備するという考え方もあると思います。

開業費や創立費との違い

資本金が、開業費や創立費と似ていると思った方もいるかもしれません。開業費や創立費は、貸借対照表の資産の部の中で「繰延資産」に分類されます。それぞれの内容は以下のとおりです。

  • 創立費:会社設立にかかった費用。法務局で設立登記するときの登録免許税など。
  • 開業費:会社登記後、事業開始までにかかった費用。広告費など。

増資の種類は3つある

増資には以下の3つがあります。

公募増資

公募増資とは、不特定多数の投資家から出資を募る方法です。広く集めるため、多くの資金を調達できる可能性がありますが、持ち株割合が変わることで、経営者の経営決定権に影響します。既存株主の利益に影響するため、株主総会の決議が必要です。

株主割当増資

株主割当増資とは、既存の株主に対して、その持株比率に応じて株式を割り当てる増資の方法です。割り当てられた株主が株式を購入しなければ、増資はできません。株主全員が購入してくれれば、持株比率の割合が変わらないのも特徴です。

第三者割当増資

第三者割当増資とは、特定の第三者に新たな株を発行する方法です。株主が増えることで既存の株主の利益を侵害する可能性があるため、株主総会の決議が必要です。

無償増資と有償増資の会計処理

増資する方法は、大きく分けて2種類あります。1つは、出資金の払込を受ける「有償増資」と、出資金の払込を受けずに他の資本から資本金へと振り替える「無償増資」です。

有償増資した場合の仕訳

有償増資する場合、一般的には払込期間という期間が設けられます。会社が保有する自己株式を活用する方法もありますが、内容が複雑になるため省略します。

例)1株1万円で100株を新たに発行することになり、払込期間中にその全額が払い込まれた。
借方貸方
別段預金1,000,000円新株式申込証拠金1,000,000円
例)例)払込期間が終了し、払い込まれた100万円を全て資本金へ振り替えた。
借方貸方
新株式申込証拠金1,000,000円資本金1,000,000円
普通預金1,000,000円別段預金1,000,000円

上記の仕訳で、払込期間中に払い込まれた資金については、いったん別段預金と新株式申込証拠金で処理されます。別段預金とは、会社が任意には現金を引き出せない銀行口座のことです。新株式申込証拠金は、会社の資本ではありません。

なぜ、そのように処理するのかというと、払込があった出資額については、払込期間が終わるまで資本金になると確定していないからです。募集した増資額を超える出資額の払込があった場合には、出資者間で申込数等を調整し、出資者へ返金する場合があります。そのため、一時的に別段預金、新株式申込証拠金で仕訳することになるのです。そして、資本金にする金額が決まった後に、別段預金を普通預金へ、新株式申込証拠金を資本金へ振り替える仕訳をするのです。

無償増資した場合の仕訳

無償増資の場合は、利益準備金や資本準備金を資本金に組み入れるだけのため、仕訳としては非常に簡単です。

例)利益準備金100万円を資本金に組み入れた
借方貸方
利益準備金1,000,000円資本金1,000,000円
例)資本準備金50万円を資本金に組み入れた
借方貸方
資本準備金500,000円資本金500,000円

資本金は多いほうが良いのか

財務の中長期的な健全性の観点からは、負債(他人資本)よりも純資産(自己資本)の割合が高いことが望まれます。資本金も純資産に含まれますので、その意味では資本金も多いほうが良いと言える気がしますが、果たしてそうでしょうか。

資本金が1,000万円以上になると消費税が免除されない

消費税は、一定の条件を満たすと納税義務が免除されます。その条件とは、課税期間の基準期間の課税売上高が1,000万円以下の場合で、最大で2年間は免除されます。しかし、その事業年度の開始日時点で資本金が1,000万円以上だと、免除されなくなります。すでに課税事業者になっている場合には、あまり気にする必要はありません。

資本金が増えると法人住民税の負担が重くなる

法人住民税とは、会社の本店や支店がある地域で課せられる税金のことで、法人税割と均等割の合計金額を収めます。このうちの均等割の部分は、従業員数と資本金などによって決まります。東京都の場合、資本金が1,000万円以下なら7万円、1,000万円超なら18万円の支払いが発生します。この金額は地域によって異なるため、本店や支店がある地域の税額を調べてみましょう。なお、法人税割の部分は、会社の所得の10~20%分になります。

ROE(自己資本利益率)の数値が下がる場合がある

ROE(自己資本利益率)とは、自己資本を有効活用して利益を生み出しているのかを表す経営指標です。その計算式は、当期純利益÷自己資本✕100のため、自己資本だけが増加するとROEの数値が下がってしまいます。ROEの目安は10%以上と言われるため、自社の状況を考慮したうえで自己資本の増加を図るのか検討しましょう。

まとめ

今回は、資本金について解説しました。私個人の意見として、特段に必要な理由がないかぎり、消費税の免除期間の間は資本金を1,000万円未満に、免除される期間が終わったら1,000万円以下にすることをオススメします。最後に、国税庁ホームページのリンクも記載しておきますので、ご参考まで。

参考)納税義務の免除|国税庁

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