運転資本(WC:ワーキングキャピタル)とは~計算式と減らす方法~

運転資本(ワーキングキャピタル)とは、事業活動を営む上で必要な資金のことです。この運転資本が大きくなればなるほど、つなぎ資金で調達する金額も大きくなり、資金繰りが苦しくなりがちです。そのため、運転資本は小さくすることが望ましいのですが、どうすれば小さくできるのでしょうか。

目次

運転資本が必要になる理由

運転資本が必要になる理由は、仕入れてから販売し、販売してから入金されるまでの間にはズレがあるからです。原材料を仕入れて製造してから販売するまでに、同様に、商品を仕入れてから販売するまでには時間がかかります。また、昨今のビジネスでは、現金での取引は減っており、掛取引になっています。掛取引の場合、代金の受け渡しが後払いになるのですが、売上代金の入金よりも前に、仕入代金の支払期日が来てしまうことも多々あります。そういった隙間を埋めるために必要になるのが、運転資本です。

運転資本の計算式

運転資本の計算式は2種類あります。

厳密な計算式

運転資本を厳密に計算したい場合は、以下の数式を用います。この計算式でピンとくる方は、この記事を読む必要もないかもしれません…。

運転資本 = 流動資産(現金および現金等価物を除く) - 流動負債(有利子負債を除く)

流動資産と流動負債はいずれも、貸借対照表で確認できます。現金等価物とは、3ヶ月以内の満期がくる定期預金などが含まれます。有利子負債とは、借入金のことだと思ってください。

営業活動に注目する計算式

上記の計算式では、運転資本のイメージを理解しにくい方もいるでしょう。運転資本の計算式では、日常の営業活動に着目した簡便的な数式もあります。

運転資本=売上債権+棚卸資産-仕入債務

売上債権とは、売掛金や受取手形のことです。棚卸資産は、製品や原材料、商品の在庫が含まれます。最後の仕入債務は、買掛金や支払手形のことです。

黒字になれば運転資本は増える

上記の計算式を見て気づいた方もいるかもしれませんが、利益が出ると(黒字になると)運転資本は大きくなることがあります。粗利益の計算で考えてみましょう。

粗利益=売上-原価

利益を増やすには、売上を増やすか、原価を減らすかしかありません。売上が増えれば売上債権が増えて運転資本が増えます。原価を減らすために仕入を減らせば仕入債務も減少して運転資本が増えてしまいます。在庫を増やすと(棚卸資産を増やすと)原価が減りますが、運転資本は大きくなります。

黒字倒産しないように運転資本を調達する

黒字でも運転資本が必要なことは、お分かりいただけたと思います。運転資本を確保できなければ、黒字でも支払不能になり倒産、つまり黒字倒産してしまう可能性があります。そうならないように、借入金などで運転資本を調達するようにしましょう。

運転資本を減らすには

営業活動に着目した計算式を見ると、運転資本を減らす方法が分かりやすくなると思います。

売上債権を減らす

売掛金や受取手形を減らすと、運転資本を小さくできます。たとえば、取引先に取引条件を変更してもらい、売掛金や受取手形の支払期日を短縮してもらう方法があります。ただし、これは相手もある話のため簡単ではありません。ただし、売掛金の回収を管理していないばかりに、入金が支払期日を過ぎてしまう場合があります。この場合にも運転資本が増えてしまいますので、日頃の売上債権管理を徹底することも大切です。また、短期的な方法としては、売掛金を売却して想起に現金化する「ファクタリング」を利用する方法もあります。

棚卸資産を減らす

棚卸資産を減らすには、ずばり無駄な在庫を持たないようにすることです。棚卸資産の回転率を上げて、滞留する期間を短くします。

仕入債務を増やす

仕入債務を増やすと言っても、仕入自体を増やすわけではありません。仕入債務の支払期日を先へ延ばすことです。売上債権を減らすのと反対で、取引先からの仕入債務の支払条件を変更してもらうように交渉します。しかし、これも得意先あってのことで、関係が悪化しては今後の経営に悪影響が出ますので、注意しましょう。

運転資本のまとめ

今回は、運転資本について解説しました。運転資本の調達では、通常は借入金を用います。しかし、急に大型受注が入った場合などに、銀行からの信用枠が足りなかったり、赤字決算や税金滞納で新規借入が困難なときもあるでしょう。そういったときに便利なのが「ファクタリング」がです。ファクタリングとは、売掛金をファクタリング会社に売却し、手数料などを差し引かれた代金を受取るサービスのことです。信用調査されるのが取引先のため、あなたの信用情報に問題があっても利用できます。昨今では、個人向けの「給与ファクタリング」が問題になっていますが、事業者向けのファクタリングでも悪徳業者は多く存在していますので、ファクタリング会社を選ぶときには十分に検討しましょう。

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